2020/11/23

クールエイドを飲んだトランプ支持者たち

「クールエイドを飲む」という米語の慣用句を知っている日本人はあまりいないかもしれないが、ネット検索をすれば、その意味を解説するページがいくつも見つかる。以下はその由来を手短にまとめた文書の一節である。

「drink the Kool-Aid (クールエイドを飲 む)」という慣用句は、「むやみに信じる」とか「無批判に従う」とか「盲信す る」という意味になるらしい。 なぜそんな意味になったかというと、1978年にガイアナでおこった集団自殺に関係がある。人民寺院という宗教団体の信者900名以上がシアン化合物入りの粉末ジュースを飲んで自殺した。教祖が言えば毒入りでも飲むぐらい無批判に従う。 というわけで「クールエイドを飲む」と言えば、「無批判に従う」とか「盲信する」という意味になったらしい。(株式会社大和コンピューターのメルマガより


クールエイドのパッケージ例

トランプの支持者の中には、covit-19(新型コロナ)のパンデミックは民主党の選挙戦略のデマだから選挙が終われば誰も口にしなくなる、風邪と同じで怖くない、いい薬があるからすぐに治る、マスクはするな、避ける必要もない、云々というトランプ大統領の集団免疫作戦、またの名を「無策」を信じて、死ぬ目にあっている人がいるようだ。つまり、彼らはクールエイドを飲んだのだ。

それを象徴するような話が先日ツイッターで拡散され、ニュースにまでなった。サウスダコタの救急看護婦が打ったツイートは、covit-19で死にそうになっていても、その存在を信じないトランプ信者がいるらしいことを示している。

(訳)今夜は病院の夜勤がない。犬と一緒にソファーに座りながら、ここ数日のコロナ患者のことを考えずにはいられない。特に印象に残っているのは、新型コロナのウイルスが本当だということをいまだに信じない連中だ。魔法の薬を求めて叫び、ジョー・バイデンが (訳)アメリカをダメにすると叫ぶ連中だ。しかも、それは呼吸困難で100%に設定したVapothermに繋がれている間も続く。自分が病気なのには別の理由があるに違いないと言い張る。看護婦に罵詈雑言を浴びせて、なんでそんなものをごたごた身に着ける必要があるのか、自分は新型コロナに罹っていないし、そんなもの存在しないし、と詰問してくる。これは本当の話だ。そして

(訳)そのことが頭から離れない。あの人たちは自分がそんな病気に罹るなんてありえないと本当に思っている。そして、人工呼吸器のチューブが挿入されると叫ぶのが止まる。終わりのないホラー映画のようだ。出演者や制作チームのリストも出ない。ただただ始めに戻って同じことをまた繰り返す。

 以下はCNNが行った看護婦ジョディに対するインタビューである。

これが家族と話せる最後のチャンスかもしれないと言って、ビデオ通話を進めても、そんな病気はありえない、嘘だ、と言って怒りと憎悪の固まりになるのだそうだ。

トランプの人気は「パーソナリティのカルト」だという人がいる。トランプ支持者の行動を見ていると、カルトと呼ぶのもあながち間違いではないと思えてくる。トランプ大統領と信者の言動を見ていてクールエイドを思いつく人は少なくない。"Trump Kool aid" で検索すると記事だけでなく画像もたくさんヒットする。中には、Kool aid をもじって Fool aid になっているものもある。

看護婦ジョディ・ドーリングのツイートを受けて、書かれた記事もある。
For Trump cultists, COVID is the new Kool-Aid (トランプの信者にとっては新型コロナが新しいクールエイド)

when people are prepared to die denying reality, they definitely belong to a cult — one that can’t help but call to mind the hundreds who drank the Kool-Aid at Jonestown in 1978, the most astonishing example of mass delusion during my adult life.
(訳)人々が死ぬこともいとわずに現実を否定するとき、彼らは間違いなくカルトに属している。カルトの例としては、1978年、ジョーンズタウンでクールエイドを飲んだ何百人もの人々を、私が大人になってから見た最も驚くべき集団妄想の例を思い出さずにはいられない。