2015/07/14

先の戦争におけるアメリカの戦略とプロパガンダをまとめたパンフレット: 『勝利の後、日本をどうすべきか』


What shall be done about Japan after victory? 
American Historical Association. 
[Madison, Wis. : USAFI, 1945] 

PDF版:日本語(筆者訳)+英語原本 
注意:ブラウザによっては、右クリック・メニューのリンク先の保存を使用してダウンロードする必要があるかもしれません。


このパンフレットは日本の敗戦が明らかとなっていた19456月にアメリカ軍を日本占領に向けて教育するために出版されたものです。「各パンフレットの目的はただ一つ。問題をすべての観点から討論するためのたたき台として、事実関係の情報とバランスの取れた議論を提供することです。」と書かれていますが、日本の観点からは事実誤認、歪曲、曲解、偏見、こじつけなどが少なくないと思われます。それらが当時の米国内のさまざまの勢力の状況認識を反映したものだったのか、公式見解だったのか、米軍向けのプロパガンダだったのかはわかりませんが、全体を通して、日本人あるいは日本の軍部がアジアの平和を乱した諸悪の根源であり、彼らをたたきのめして二度と刃向かえないようにするのが人類のための正義であるという論調が貫かれています。それは、敗戦後に占領軍が実施した War Guilt Information Program (日本はなぜ侵略史観・自虐史観を押し付けられたのか を参照)1000人を超える軍と政府のリーダーたちを戦犯として処刑した極東軍事裁判でも貫かれていたナラティブであり、残念ながら今でも世界の大部分で「正史」として受け入れられているものと思われます。

日本の観点からの正しい歴史を世界と共有するには、このパンフレットをたたき台にした小冊子を英語で出版するのも一案かもしれません。

ちなみに、このパンフレットを作成したアメリカ歴史協会のアーカイブ・サイトには、その作成過程に学者、ジャーナリスト、国務省、CIAの前身であるOSSなどが関係したと書かれています。詳しくは、次のサイトを参照してください。


2 件のコメント:

dualism さんのコメント...

全てをまだ読んでいませんが、貴重な資料とその翻訳の公開に感謝します。アメリカの政府は、官僚、学者、ジャーナリストを単一の目的に利用して、日本が申し入れていた停戦を拒否し続け、自分たちの沖縄の侵略 aggressionの真っ最中に、「日本が侵略国家だ」「日本国民は差別すべき異質な人々だ」「日本国民は殺されて当然だ」という明らかなプロパガンダを続けていることがわかるドキュメントです。分析に見せかけていますが、書かれていることは、偏見と感情に流された人種差別の集団化と、差別をもっとも残酷な行為によって実現しようとする意志だと思います。

人道 humanism という観点から、このドキュメントを再検証することができると思います。 差別をしていたのは誰だったのか、そして、差別にもとづいて非人道的な行為を一貫して導いたのは誰だったのか、ということです。原爆による核攻撃 nuclear aggressionも非人道的な異常行為ですが、昭和20年3月-6月の沖縄の戦闘からして、人類の戦争の歴史から見れば異常で非人道的な戦闘の典型でしょう。あれは、戦争終結のために、誰がどう見てもやる必要のない戦闘です。

ドキュメントに戻るなら、事実にもとづいて人類共通認識を確立しようとするのではなく、「差別するべきだ」(そう明言していないのが問題解決を難しくしていると思います) という明らかな価値判断を集団で行い、「日本国民は大量虐殺されて当然だ」という価値判断に結びつけ、そのような世論をつくろうとしていた。事実ではなく、価値判断だということが最も重要だと思います。 事実ではなく、偏った価値判断を人為的につくりあげ、それを集団化し、特定の国民の人権侵害を正当化し、その国民を人間ではないかのように殺害し、国土を侵犯しつづける。これが、非人道でなくて、何が非人道でしょうか。

Etsuko Ueda さんのコメント...

「日本。。。」という記述を「白人帝国主義者とコミンテルン。。。」に変えると真実に近くなるようなとんでもないプロパガンダですね。例えば、「日本はなぜ戦争を選んだのか(侵略戦争は日本のビジネスだった)」は「白人帝国主義者とコミンテルンはなぜ戦争を選んだのか(侵略戦争は白人帝国主義者とコミンテルンのビジネスだった」と書き直せば真実に近くなりますね。

コメントを投稿