2013/01/01

強欲が帝国を内から滅ぼす

飢饉、かんばつ、疫病、地震、津波、洪水、火山噴火、巨大隕石などの天災によって地域全体が壊滅状態になったり、大移動を引き起こしたりすることはよく話題になるけど、人間が引き起こす大災害は見過ごされがちだ。そのような災害は良く見ると強欲が原因になっているように見える。

例えばローマ帝国。the Dark Agesというこのドラマ化した歴史番組によると、ローマ帝国はかの地の伝統的な帝国モデルに従って、征服した地域を徹底的に搾取した。ただし北の方は南下してくるゲルマン人の難民を押しとどめるのに苦労していた。屈強なゲルマン人を傭兵として活用したけれども、一般のゲルマン人には奴隷化を強要し、粗末な食べ物を提供するだけだった。ゴス族と呼ばれるゲルマン人は我慢しかねて、傭兵隊長の指揮下、首都ローマを包囲して兵糧攻めにした。そして最後には徹底的に略奪と破壊を行った 。A.D. 410年のことである。その後、西ヨーロッパは暗黒時代になり、ローマ帝国の文明は忘れ去られた。西ローマ帝国はそれほど徹底的に破壊されたのである。


米国南部は1800年代、黒人奴隷を使った綿の生産で潤っていたから、富の源泉であった奴隷経済の解体など考えられないことだった。北部の州が提唱した奴隷解放運動に徹底的に反対し、南部独立を決行して南北戦争に突入した。南北合わせて60万を越える死者を出した後、南部はその奴隷経済を丸ごと失った。


20世紀の初頭、欧米諸国による世界制覇は日本を残すだけでほとんど完了していた。シナの清朝廷はまだ崩壊していなかったが、欧米列強による支配は進んでいた。日清戦争と日露戦争の勝利でシナにおける利権を獲得した日本に対して、欧米列強は日本軍をシナにおける治安維持と利権保護の主兵力として引き刷り込んだ。日本は第一次大戦中にはイギリスやアメリカのアジアにおける植民地支配を守る手助けもした。


日露戦争では日本に融資し戦争の後始末でも日本の肩を持った欧米列強も、第一次大戦後
アジアから上がる富を日本と分け合うことを嫌って、日本に軍備制限および経済制裁を仕掛けてきた。軍艦の数を制限しようとしたばかりでなく、最後には東南アジアからの石油の供給を絶って、日本を産業革命以前の状態に押し戻そうとした。それで日本は一挙にフィリピン、インドシナ、インドネシアなどの東南アジア地域とシナの一部を欧米諸国から開放し対抗した。 


それに対して、国際共産党は毛沢東の共産党を、アメリカとイギリスは蒋介石の国民党を後押しして日本軍と戦わせた。このとき日本は拡大する戦局を見直すことなく、中国でのシナ人同士および日本人に対するゲリラ攻撃を深追いし、太平洋における欧米連合軍の反撃に対しても、有効な戦略を立てることなく無駄に戦力を消耗していった。結局、日本人だけでも軍人民間人合わせて300万人近くが命を落とした。


日本を原爆と無条件降伏で屈服させた後、欧米列強はすぐさま昔どおりアジアの植民地を支配すべく戻ってきたが、日本の保護下で力をつけたアジア諸民族の独立運動によって、すべての植民地を失った。独立運動はアジアだけでなくアフリカにも広がった。そして、最大の戦勝品となるはずだった中華民国は共産党の手に落ち、欧米列強が手にしたのは小さな台湾と戦火で破壊された日本と韓国だけだった。日本の無力化で極東の治安は崩壊し、世界はシナとソ連の共産党が東アジアで振るう暴虐に手を焼くことになった。北朝鮮はその申し子といってもいいかもしれない。白人の既得権を守ろうとした欧米諸国が日本を締め出すために払った犠牲の見返りは何だったのだろうか。今その誤算の大きさを改めて反省すべき時期が来ているのではないだろうか。


近年では、アメリカの金融業界の強欲が世界の金融市場を崩壊させ、世界的な恐慌の引き金となった。各国政府が救済措置を取ったため、1930年代の大恐慌のようなことにはならなかったが、世界経済はいまだに回復していない。アメリカでは、政府に救済させておいて甘い汁を吸い続けている連中、失業も貧困も個々人の責任だという富裕層1%の利益を代弁する政党がなぜか政策を左右するだけの権力を持ち続けている。かくして富裕層1%への富の集中は続き、彼らには反省のかけらも見られない。マネーゲームという新手の搾取に味を占め自国の実質経済をないがしろにしてきた彼らに、法廷でそのつけを払わさせようと手ぐすね引いている勢力も力を付けてきている。


中華人民共和国に目を移すと、シナの共産党がその膨大な人口を背景とした市場と安い労働力を開放したとき、世界の企業や資本家は、濡れ手に粟とばかり、みんな喜び勇んで工場を移し投資した。その結果、それを取り仕切る政府官僚が巨額の富を蓄積した。21世紀の技術力を手に入れ、人口規模を頼みにした経済力と19世紀流の野蛮ぶりを根深く内包するこの独裁政府がいかに世界平和に対する脅威となるかを、濡れ手に粟の連中は見てみぬふりをしてきた。周辺民族はもとより、自国民に対しても暴虐三昧を繰り返し、領土拡大と植民地化の野心をあらわにしてアフリカでもその野蛮ぶりを見せ、挙句の果てには東南アジアや日本にまで領土拡大の戦略を仕掛けてくるようになって、世界はようやくことの重大性に気付きだした。濡れ手に粟の連中は、この先この独裁政権が采配を振るう新経済秩序がどんなものだか思い知らされることになるかもしれない。


聞くところによると、シナの共産党は、かつて「シナ」を支配したことのある国が支配したことのある地域はすべてシナの領土だと言っているそうだ。「シナ」を取り巻くさまざまの国や民族が入れ替わり立ち替わりあの地域を支配してきたから、チベット、内モンゴル、ウルグアイ、満州など既に占領下にある地域に加えて、東ヨーロッパからイスラム諸国、中央アジア、インド、インドシナ、朝鮮、台湾、日本、さらには樺太までの広大な地域がその中に入る。その論理をわずかに拡張すれば「シナ人が大勢住んでいる地域はシナの領土だ」という主張に行き着く。それには世界のほとんどが入る。


ヨーロッパにおける共産党の崩壊は彼らの強欲のせいだったという説もあるが、シナの共産党も富の誘惑の落とし穴を避けて通っているようには見えない。今のところアンチ・マネー・ロンダリング法を適用しようとする国は出てきていないようだが、この先どうなることか。お手並み拝見というところである。